Interview

―GLIKに選抜された際、GLIKプログラムについて、どのような印象をお持ちでしたか?

上司から参加の話を聞くまでは、GLIKプログラムについての知識はゼロでした。ただ、個人的には、数年前から社外や海外での研修に興味を持っていました。入社以来、同じ部署での仕事が10年続き、今後どのようなキャリアを歩んでいくべきか、どう殻を破っていけばいいのか考えていた時期だったこともあり、何かのきっかけになればと思い、飛び込みました。

―参加されてもっとも驚いたこと、刺激的なことは何でしたか?

冒頭の日本モジュールは、中央大学(東京・後楽園)のキャンパスで行なわれるのですが、講義を一方的に聞くのではなく、都度問いかけられ、自由に発言、ディスカッションが求められるスタイルは初めてで、最初はとても戸惑いました。
何をどのようなタイミングで発言すればいいのか、内容が難しくなるにつれ、発言する怖さを知ってコメントできなくなってしまったこともあったほどです。
それでも、そういった場では「何も話さない」ということは「価値を提供できない」ことを意味しますので、たとえ議論の核心をついていないと思っても、何かコメントするよう努力を続けました。
また、日本モジュール中の講義は理論的なことも多く、なんとか乗り越えられましたが、次のハワイモジュールでは、自分の知識不足を痛感…。国際情勢や政治、社会問題について、当初まったくついていけませんでした。
そのため、日本にいるときは、時事問題について会社や日常会話ですることは滅多になかった私が、ハワイモジュール以降は、ネットの記事や動画で積極的に勉強し、授業の行き帰りにも仲間と議論を重ね、なんとか追いつこうとインプットとアウトプットを繰り返しました。

―GLIKプログラムの目的の1つに「リーダー育成」がありますが、参加を通して、リーダー観に変化はありましたか?

これまでは、「リーダーはスキルがあるからリーダー」「仕事ができるからリーダー」というふうに考えていました。
でも、今後リーダーになるような人材である、他国からの参加者とディスカッションしたり、シンガポールやタイで学ぶうちに、少しずつ自分の中のリーダー像が変化していきました。
これまで私が考えていたリーダーは、スキルがあるという意味でいわば「プレイヤーのリーダー」であり、本当のリーダーではないと感じるようになったのです。
では、本当のリーダーはどんな人材かといえば、どんな環境であっても、自分のまったく知らない領域の仕事であっても、リーダーになれるような人―― 平易な言葉でいえば、「人間力」があって、メンバーを率いることができる人なのではないでしょうか。
GLIKプログラムのテーマの1つに「グローバル」がありますが、グローバルというのは「海外」である必要はなく、仕事、場所、メンバーを問わないということであり、そういった環境でリーダーとなれる人が、これからの時代に求められているのではないかと考えるようになりました。

―プログラム全体を通して得たもの、あるいは思い出深い出来事はありましたか?

「得たもの」と言えるかわかりませんが、仕事以外のことについて、知らないことが多過ぎるということを認識できたことでしょうか。
ハワイで国際情勢や時事問題を積極的にキャッチするようにした習慣は、帰国後も続いていて、家族に「変わった」と言われるほどに、今では情報を集めるだけでなく、自分の考えを発信するようにしています。
また、仕事への取り組み方にも少しずつではありますが、変化が出てきました。海外からの参加者と一緒に過ごしながら思ったのは、緩急をつけた仕事のやり方をしているということ。言葉を選ばずにいえば、「要領がいい」ということなのかもしれませんが、驚いたのは、例えば、ある参加者が授業の開始時間に少々遅れてきたとしても、同じ授業のプレゼンにおいては誰よりも凄いパフォーマンスを発揮したりと、そういう緩急を目の当たりにしたことです。
それを見ながら感じたことは、「目的は何か、何を優先すべきか」について考える習慣が大切だということ。
以前の私であれば、あまり疑問を持たずに、与えられたことを愚直に泥臭くやり遂げようとしていたのですが、最近では、「そもそもこの業務は何のためにやっているのか」「誰のための仕事なのか」という思考回路を働かせるようになりました。別の言葉でいえば、俯瞰的に、全体的に、視野を広くして考えられるようになったということなのかもしれません。
視野が広くなったという意味では、キャプストーンプロジェクトのテーマである「うつ病」の解決策に思いを巡らせていたときのタイモジュールでの経験もまた、私の考え方に大きな影響を与えた出来事でした。
日本人からすれば、山奥の、あまり便利ではない環境下だったのですが、そこに在るものをうまく利用しながら生活する人々と交流することで、「幸せとは何か」を考え直すきっかけとなり、日本にいるだけでは気づくことのできない視点をもらったように思います。

―今後、参加する方へのメッセージ、アドバイスをお願いいたします。

実は、GLIKプログラムでの経験をどう説明すれば、周囲の人に正解に伝わるか、とても苦心しているところです。「視野が広がった」「新たな視点を得た」という言葉はとても平凡で、聞いた人からすれば、「それだけ?」と思ってしまうような気がして、もどかしいのです。私自身、参加前にはGLIKプログラムの内容の20%も理解できていなかったことからすれば、やってみなければわからないというのが実際なのかもしれません…。
ただ1つ言えることは、答えのない問いを突きつけられるのは、日本では少なく、そのことが、GLIKプログラムの「本質」だったように思います。
「視野が広がる」「新たな視点を得る」というのは、日本国内でのみ受講する研修でもある程度行なわれていることかもしれませんが、いつもと違う仲間、いつもと違う場所、いつもと違う言語という環境に半ば強制的に身を置く。そして、「なぜ」「なぜ」「なぜ」を問われ続け、あるいは自分自身でも問い続ける中で得たものが、「本質を追求することの大切さ」でした。言葉にすれば平凡ですが、それは経験したからこそ実感できたことでもあります。
これから参加される方、英語について不安に思っている方にお伝えしたいのは、もちろんベースの英語力は必要ですが、あとは発言する度胸さえあれば大丈夫だということ。
そして、英語力よりも、自分の意見を持つこと、政治や国際情勢、時事問題に対して日頃からアンテナを張っておくことのほうが圧倒的に大切です。
そして、たとえ、企業派遣での参加であっても、やらされ感で参加するのは危険です。何かしら自分でテーマを設定して、行きたいから行くというマインドで臨んでみてはいかがでしょうか。

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