Interview

―GLIKに選抜された際、GLIKプログラムについて、どのような印象をお持ちでしたか?

入社以来、ハードウェア開発の仕事に携わってきましたが、最近、社外、海外とのコミュニケーションが増え、文化や言語的な問題で四苦八苦していたところでした。ですので、参加について知らされたときは、驚いたと同時に、これはチャンスだと感じました。
また、実は、数年前に、別の社内研修でGLIKプログラム開催地の1つであるハワイを訪れ、「もっと視野を広げたい」とマインドが少しずつ変わり始めていた頃に声をかけていただいたので、すんなり受け入れられたのかもしれません。
とはいえ、当初は短期版のMBA程度に思っていたこともあり、GLIKプログラム開始後、戸惑うことも多かったのですが…。
あとは、英語の問題は避けては通れないなという危機感はありました。大学時代、英語は得意科目ではなく、むしろ嫌いなほうでしたので。
ただ、事前オプションプログラム*1で2週間の英語学習の期間が設けられており、なんとか食らいついていったという感じです。

*1: GLIK本プログラムの開始直前に、日本人参加者向けに用意されている英語強化合宿。

―参加されてもっとも驚いたこと、刺激的なことは何でしたか?

英語の壁ということはもちろんありましたが、英語スキル以前の部分の「差」に圧倒されました。他国からの参加者には、海外留学経験者やMBA取得者もいたりと、国を背負う覚悟で参加している人が多く、どんなトピックであれ、ご自身なりの見方や意見を持っていて、講義中、ディスカッションで言い負かされてしまうことがしばしばありました。
たとえば、ディスカッションの最中、「No!」と異論を挟んだ際、「Why?」と突っ込まれて、理由をはっきり言えない自分をもどかしく思ったり…。
ただ、時間が経つにつれ、18人の参加者の結束も固まり、皆、相手の意見を聞こうとするスタンスで臨んでくれたため、だんだんと言葉の壁を超えたディスカッションができるようになっていきました。
日本モジュール期間中には、ANAグループ会社の障害者雇用の現場でリアルなお話を伺う機会もあったりと、普段、エンジニアとして働いている私にとって、ある意味で「自分の専門スキルが全く通用しない土俵」での学びは、大変でもありましたが、とても刺激的でした。

―GLIKプログラムの目的の1つに「リーダー育成」がありますが、参加を通して、リーダー観に変化はありましたか?

シンガポール・タイモジュールでは、リーダーシップについて学んだのですが、これまで自分のなかでは漠然と、「ビジョンを示して導くのがリーダー」くらいに思っていました。
ただ、抽象的な定義はそれでも構わないのですが、両国のリーダーの国づくりを学ぶにつれ、国や地域、集団によってまったく違うであろう現状、課題に対して、組織を変え、チームを作り、国民をリードし、具体的なソリューションと実行に落とし込む――。ビジョンからアクションまで責任を持って進められる人にしかリーダーは務まらないと痛感したものです。
リーダー観については、他国の参加者からも多くのことを学びました。私たち日本人に比べ、実際、生き死の問題に直面する機会も多く、課題設定や議論の質が一段上だと感じることがたびたびありました。
たとえば、ベトナムのストリートチルドレンの問題、フィリピン沿岸での海洋プラスチックごみ問題など、今世の中で起きていることに対して、知見を持ち、常にソリューションを提供しようという積極的な姿には度々圧倒され、自分自身が世界の問題をいかに知らないかを思い知らされました。
私もそれに大いに触発された部分があり、文化や捉え方の違いによって、ときには参加者が涙を流すほどに紛糾するディスカッションにおいても、自分の意見を積極的に発信するように努めました。

―プログラム全体を通して得たもの、あるいは思い出深い出来事はありましたか?

Tabata smile2私にとっては二度目で土地勘もあったハワイは、毎日の講義、宿題に加え、グループプロジェクトもありと大忙しでしたが、土日は一緒にドライブに行ったりと、参加者同士で交流を深めることができました。
また、キャプストーンプロジェクト*2は私にとって得るものがたくさんありました。実は、当初、エンジニアの仕事に直結するテーマを考えていたのですが、アドバイザー*3に「自分がやりたいことが出過ぎている。社会、地域、組織の問題解決に寄り添うテーマを設定したらどうか」と助言があり、ゼロベースで考え直すことにしました。
その中で、気づいたのは、エンジニアというのは、まず解決すべき課題があり、そのために最短、最善の策を考える、いわば「How」を考えることが多いのですが、そもそも課題は何か、なぜそれが問題なのかというように「Why」を問うことの重要性です。
そういった意味で、自分たちの仕事は何を目指しているのか、どのように世の中に貢献しているのかを改めて考えるきっかけとなりました。

*2: 各モジュールでの学習・実践に加え、参加者各自が、3.5カ月間取り組む個人プロジェクト。自身が実際に解決したい社会課題を定義し、解決のためのイノベーションモデルを創る。

*3: GLIKプログラム参加者のキャップストーンプロジェクトに助言・アドバイスする伴走者(参加者4〜5名に対して1名のアドバイザーがつく)。富士通株式会社の幹部社員(統括部長・本部長クラス)がアドバイザーを務める。

―今後、参加する方へのメッセージ、アドバイスをお願いいたします。

何かを変えたい、でも何から取り掛かればいいかわらかないと、もんもんとしている人におすすめのプログラムです。私自身も参加する前、同じ仕事を10年以上するなかで、目の前のやるべき事にフォーカスし過ぎるあまり、視野が狭くなっていることに危機感を抱いていました。
普通であれば、転職したり、日常というある意味で安全な場所を離れて、まったく違う仕事をしなければ得られないような視点を、GLIKプログラムであれば、3カ月半の短期間で得ることができるというのはとても貴重なことだと思います。
また、英語力はあるに越したことはありませんが、プログラムを通してもっとも大切なことは、「何を伝えるか」です。これから参加する方々には、自分が対話をする相手から新しい知見、視点を得るだけでなく、こちらも相手に何かを渡せる、すなわち「ギブアンドテイク」が成り立つように、積極的に発信していただければと思います。
それはプログラム参加期間中だけでなく、普段の仕事でも必要な視点です。スーパーコンピュータに関わっている私自身のことでいえば、帰国してからは、私の仕事は社会に対して何を提供できるのか、何が価値なのか、もっと積極的に発信していかなければならないと思いを新たにしているところです。

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