Interview

―GLIKに応募される前、GLIKプログラムについて、どのような印象をお持ちでしたか?
社内にプログラムを受けたことのある先輩が何人もいたため、以前からGLIKの存在は知っていました。ただ、すべて英語での研修ということに壁を感じ、私の会社でも手を挙げるのに躊躇する人は少なくありません。私もその一人でしたが、10年間、地方公共団体向けのシステムを開発する仕事をずっと続けていることもあり、他の会社や業種の方との接点も少なく、仕事のマンネリ化に危機感をもっていました。そのため、プログラムへの応募は新しいことにチャレンジするチャンスだと思い、参加を決心したのです。
実際、手を挙げてからは大変でしたね。とにかくプログラム開始までの半年間は英会話教室に通い詰めて、英語の特訓をしました。小さい頃、2年間だけアメリカに住んでいたことがあり、リスニングに苦手意識がなかったのは幸運ではありましたが、それでも参加するまでは不安でいっぱいだったのを覚えています。

―参加されてもっとも驚いたこと、刺激的なことは何でしたか?
まず、プログラム前の面接からして、緊張の連続でした。事前に志望動機などを英語で暗記して臨んだのですが、うまく話せたかどうか……正直記憶がないですね。
その後の日本でのプログラムで驚いたのは、他国出身者の方が講師の発言を遮ってまで積極的に発言したり、質問していることでした。私は、よくわからないことがあっても、「なるほど。おそらくこういうことだな」と自分の中で答えを出して、自分で納得してしまうタイプだったので、余計にギャップを感じました。
「なぜ、そんなにたくさんの質問ができるのか」と聞いたところ、「興味を持っていることを聞いているだけだよ」と言われたのですが、それでも腑に落ちなかったので「どうやって興味を持てばいいのか」と重ねて尋ねました。すると、「興味を持とうと

するのではなく、ただ知りたいことを聞けばいい」と返されてしまい、うーんと考え込んでしまったものです。
それでも、メンバーと一緒にディスカションを重ねるなかで、新たな発見がありました。それは、私の発言に対して「そういう考え方もあるのか」という意外な反応があったことです。以前は「他の人も同じような視点を持っているだろう」とか「こんな考え方は当たり前だろう」と、発言する前に勝手に決めつけていたのですが、そうではなかったのです。そのことに気づいてからは、自分の発言が他の人の発見につながることもあるのだと思い直し、少しずつではありますが、積極的に発言や質問をするようになっていきました。

―GLIKプログラムの目的の1つに「リーダー育成」がありますが、参加を通して、リーダー観に変化はありましたか?

研修でさまざまなリーダーシップについて学んで感じたのは、リーダーシップのあり方は1つではなく、時と場合によって使い分ける必要があるということです。
たとえば、コロナ禍のような危機に際して、リーダーが戸惑ってしまったり、周りの意見を求めるばかりで方針を示せないと、周囲は余計に不安になってしまいます。これは私たちの仕事でも同じで、トラブル発生時に、リーダーがメンバーと一緒に焦ってしまっては、解決するものも解決できなくなってしまいます。一方で、たとえ内心焦っていても、リーダーが「大丈夫だ。解決できる」という顔をして、明確な方針を示すことできれば、メンバーは安心してついていくことができます。そして、そのために必要なのは、自分はこうしたいという「信念」や、リーダーとしての「哲学」なのです。

もう1つは、さまざまな視点から物事を捉え、本質を見抜くために傾聴するリーダーシップです。誰かの発言は誰かの気づきにつながる――そのことを研修を通して身をもって経験したため、今年の4月から部門のリーダーを務めるなかで、とくに意識しています。研修の最初のほうで私があまり発言をしなかったのと同じように、「自分の考えは大したものではない」と思っているメンバーがいるのではないかと常に考え、発言を促すといったイメージですね。実際、周りの意見をしっかりと聞くことで、当初の考えとは違った結論、よりよい戦略が導き出されることも多く、時と場合によってリーダーシップを使い分ける重要性を痛感しています。

―プログラム全体を通して得たもの、あるいは思い出深い出来事はありましたか?

プログラム中は、講義やディスカッションに積極的に参加するのはもちろん、できるだけ多くの時間を参加者のみなさんとの対話や交流に使えるように意識しました。それはプログラム終了後の現在も続いていて、実は先日もインドからの参加者とテレビ電話で近況報告をしたところです。インドは人口も多く、コロナの感染者数も深刻ではあるのですが、彼自身はとても元気そうに、今取り組んでいることを楽しそうに語ってくれました。彼はキャプストーンプロジェクト*のテーマだった「貧困層向けの教育」を、発表だけに終わらせることなく、帰国後に地元の大学などを巻き込んで、リモート教育として開始したそうです。ちなみに、私のキャプストーンのテーマは「認知症」でしたが、彼との対話を通して、私もできることからやっていこうと気持ちを新たにすることができました。卒業後も、こうした異文化交流や他国の参加者とつながれるというのは、このプログラムの醍醐味の一つだと私は思っています。

*各モジュールでの学習・実践に加え、参加者各自が、3.5カ月間取り組む個人プロジェクト。自身が実際に解決したい社会課題を定義し、解決のためのイノベーションモデルを創る。

―今後、参加する方へのメッセージ、アドバイスをお願いいたします。

タフな研修であることは間違いないのですが、がんばった分だけ学ぶことがあるため、積極的に参加してほしいと思います。私自身、最初から果敢にぶつかっていれば、もっと学ぶことが多かったのではないかと後悔しています。また、英語での議論やプレゼンを乗り越えたこともあって、日本語での発表などは「なんとでもなる!」と思える度胸がついたのも嬉しい収穫でした。
あとは、先述したように、プログラム中だけでなく、終了後も交流を続ける仲間と出会えるのは、このプログラムならでは特徴だと思います。研修中は意見の違いから衝突することもありますが、そのこと自体も他者の視点や異文化を学ぶきっかけになりますので、「こんなチャンスはない」という気持ちで楽しんでいただけると、より多くの学びを得られるのではないでしょうか。

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